この方に記事を書いていただきました!
加藤さん サウンドディレクター
KLab株式会社 クリエイティブ部所属 サウンドディレクター(入社5年目)
フィールドレコーディングやフォーリー録音をはじめ、生音系の音作りや音の収集を趣味・得意とするサウンドの人。
「派手な音作り」ではなく、リアルさを追求したうえで重みを感じることの出来る音作りを研究中。
こんにちは。 サウンドグループの加藤です。
今回は、社内の音素材を拡充させるため、色々な物を色々なマイクで録音を行ったので、そのレポートとまとめになります。
元々、フィールドレコーディングなどでマイクを使ったりするのが好きだったのですが、観賞用での録音だけではなく、音素材として録音をしてみるのはどうだろう?と思い付き、どうせなら使えそうな音、なかなか探し難そうな音を社内音素材ライブラリとして追加していこう!と考えてチャレンジすることにしました。
これ系の音は皆欲しいよねッ!という事で武具系の音は真っ先に録音候補に挙がりました。
実際、海外のライブラリを漁ってもなかなか自分も求めている素材に巡り合えなくてずっと悶々としていたんですよね。
まず揃えたのがこちら『音響効果刀【スタンダード版・ライト版】』。
鉄職人の岸晃一郎さんが制作されている効果音制作に特化した刀?です。
普通に刀を振ったり擦ったりするだけでは出すことの出来ない『鋭く余韻に特徴があるデフォルメされたような音』が出せちゃいます!
▽音響効果刀_スタンダード版
▽音響効果刀_ライト版
次に、模造刀なのですが...まずは『日本模造刀』と『日本居合刀』です。
刀身に溝が入っているのが「居合刀」、無いものが「模造刀」になります。
溝が入っている分刀身が軽くなっており「居合」を練習する際に使われる刀です。
重心も模造刀と居合刀で違ったりもするのですが、基本的な構造は変わりません。
「模造刀」も「居合刀」も音響効果刀の様に鋭く余韻のある音は出すことが出来ません。
しかし、柄や鍔の部分は音響効果刀よりもずっと『日本刀』なので、「カチャッ」や「チャキッ」の様な動作する際の音には欠かせない素材となります。
今回、2刀用意したのは鍔の素材...「亜鉛合金」と「鉄」の2種類の音の違いを調べるためだったのですが、鍔の素材や密度だけではなく、鎺の素材によっても音が変わっていたので面白いな!と感じました。
▽居合刀_チャキッ
▽模造刀_チャキッ
日本刀...ときたら他の国の剣も欲しいですよね!
ということで、西洋模造剣になります。
こちらはDENIX(デニックス)というメーカーが造っている模造剣で、数ある製品の中で『刺突剣(画像:中央)』、『長剣(画像:右)』、『カトラス剣(画像:左)』を揃えてみました。
音響効果刀の様に長時間余韻が続くということはありませんでしたが、『刺突剣』、『長剣』はそこそこ余韻が伸びた印象。
抜刀した際の音の響きがとてもよく、こちらも武器を印象付けるいい素材が手に入りました!
▽刺突剣
▽長剣
▽カトラス剣
次に防具系の素材...
ガントレットは国や時代によって形や素材が様々なのですが、今回は『マイルドスチール製のゴシックガントレット(画像:右)』と比較用に『ステンレス製のクールブルグガントレット(画像:左)』を用意してみました。
どちらのガントレットも金属系の重々しい良い音を聞かせてくれたのですが、個人的には細かい素材を多く使用しているゴシックガントレットの方がより繊細な「カチャカチャ」音がしてとても良かったです!
▽ステンレス製クールブルグガントレット
▽マイルドスチール製ゴシックガントレット
...西洋甲冑ことアーマーも揃えようと思ったのですが、写真などを見るにあまり良い音が鳴りそうな気配ではなかったので注文は取りやめ。
え?じゃあ、防具は手の部分だけなの?と思われた方...それだけじゃございません。
胴防具の音にも使えそうな音のする素材を組み合わせてみよう...と考え『革製の鞄』の中に『日本甲冑の大袖』、『小鍋』、『レンチなどの工具』を入れて試しに振ってみるととても良い音じゃないですか!
調べてみると国内メーカーの大人気アクションゲームの防具音も同じような手法で録音されているのだとか...皆さん「無いものは造ってしまえ精神」は一緒ですね!
▽装備用バッグ
効果音の元になる小道具を紹介したので、次は音を録音するマイクをご紹介します!
今回の録音で使用したマイクは3本。
■ RODE NTG3(ショットガンマイク)
■ Sennheiser MKH8050(スーパーカーディオマイク)
■ Sennheiser MKH30(フィギュアエイトマイク)
といったラインナップになります!
【RODE NTG3】
まずは細長い見た目が特徴的な『ショットガンマイク (通称:ガンマイク)』。
この形のマイクは知ってる! という方も多いかと思います。
ガンマイクは指向性がとても鋭いので音素材の繊細な音もしっかりと拾ってくれます!
また、ガンマイクの側面に空いているスリットで先端以外から入ってくる音を抑制してくれる効果も持っているので、正面の音だけが強調され、切り取ったかのような効果を出してくれます!
NTG3の質感はRODE特有のやや硬めなサウンドという感じ。
ショットガンの指向性が上手く作用してくれたのか、音自体もクリアに録音できました!
真横から狙うセッティングだと自分の服の音も入ってしまうので、狙う時は『やや上から、下向きで配置』するのが良いのかなと思いました!
【Sennheiser MKH8050 & MKH30】
次のマイクは2つを併せて使用する特殊なマイクとなります。
MS(Mid-Side)マイクと呼ばれ、ショットガンのような鋭い指向性にプラスして音の広がり...ステレオ効果を与えてくれる録音方法なんです!
MSの録音は、音素材のような繊細な音にステレオ感を少し与えてあげたい時などに有効で、フォーリーなど室内での使用以外にも焚火や爆発音、設置花火といった『音源の芯を捉えつつ、尚且つ広がりも欲しい』場合に重宝しますね!
こちらのマイクの質感もかなり良く、RODEよりは硬くはないですが、その分重みやマイルドさがあり、聴き易い音なのかなと感じました。
特にMKH8050は上が 50,000Hz までの帯域を持っていて、ピッチシフトを想定したハイレゾで録音する事ができたので、使用用途の幅が広がって良かったです!
大規模な会社以外では効果音収録に適したフォーリーステージを持てない事や、効率化、時間短縮の関係で市販の効果音ライブラリに頼ってしまう部分がどうしてもあるサウンド制作ですが、ライブラリを探しているうちに『この部分があれば完璧...』や『この音が欲しいけど無い...』といった事が必ず起こりうると思います。
そうなった時には調達できる素材でガンガン録音をしていくと色々な発見があって面白いです。
効果音素材で悩んでいる方は是非『自分で録ってみる!』を実践してみてください!
KLabのクリエイターがゲームを制作・運営で培った技術やノウハウを発信します。
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